2020年7月18日土曜日

ファーゴ:1stシーズン感想

 映画版ファーゴは見たことはあるが、おもしろいけどそこまで印象に残らなかった。が、何気なく見たドラマ版ファーゴは1話から引き込まれる内容で、最後には満足感でいっぱいだった。久しぶりにここまで完璧なものを見れたので、感想を残す。

ファーゴの世界における「選択」に注目してみる

 ファーゴの主な登場人物は4人。きっかけは保険業のレスターが不運続きの生活のなか、病院の待合室でマルヴォという殺し屋と会話をしたことから始まる。その日朝から妻にチクチク嫌味を言われて、保険の相談に来た夫婦の契約を逃し、高校時代にいじめられた同級生とたまたま出会ってしまい恥を晒して鼻を折ってしまったという、ただの愚痴のつもりがマルヴォは「なぜやり返さない?」と真に受けてしまう。殺しの依頼ならYESかNOとレスターに迫るが結局は【どちらの選択もしない】で、その場は終わる。同級生は殺されてしまいレスターの生活は大きく変わっていく。最終的になにもかもうまくいき、レスターは【人が変わり】仕事でも成功し、表彰されるとこまで登りつめる。その夜、身を潜めていたマルヴォらしき人物に声をかけて一旦は人違いで終わらせるが【自分は変わったんだ】とマルヴォと向き合い、対峙してしまう。これが引き金となり、レスターは命を失う。つまりレスターはマルヴォに対して【何もしない】ということが、成功への道だったということを指しているように汲み取れる。

 一方そのマルヴォを追うことになる警官で寡男のガスの【選択】もおもしろい。たまたま職質をかけた相手がマルヴォに「闇を見ることになるぞ」とそのただならぬ気迫に負けて【見逃してしまう】。見逃したことによりマルヴォは何人もの犠牲者を出すことに。ガスはマルヴォが気になり、乗っていた車を調べてみるとマルヴォが起こした事件にたどり着く。もう一人の警官モリーもレスターを不審に思い独自の捜査を開始するが、署長とレスターが知り合いということもあり、なかなか進まず一旦幕を下ろすことになる。この事件がきっかけで知り合い、恋愛感情を持った二人はマルヴォを追い詰めるがモリーは負傷。二人は【立ち向かった】結果、悲劇を見てしまうことに恐れて事件から身を引く。それから一年後二人は結婚しており、モリーは子供を身籠る。安定を求めていたがレスターが巻き込まれる事件が発生し、またマルヴォと向き合うことになる。ここでガスはたまたまマルヴォを発見してしまう。葛藤の末、ガスはマルヴォを殺して、決着をつける。最後のカットはガスとその娘とモリーで終わる。

 つまりガスは【見逃した】ことにひどく罪悪感を覚えて、一度立ち向かうが大切な人を失ってしまったことへの恐怖心に負けて、安定を取ってしまう。しかし、またマルヴォ=悪が漂いはじめて、自ら【決着を付ける】という裏の主人公だったことに感銘を受けてしまった。ガスは正直あまり目立たない存在というか、どっちかというとダメ警官、モリーが優秀な警官として持ち上がるので、最後はまさかと驚いた。久々に練られている至極の作品が見れて感動した。

 このファーゴはミニシリーズなのでシーズン毎に完結し、キャストを一新するみたいなので2ndシーズンも楽しみに見ようと思う。

2020年7月4日土曜日

十三騎兵防衛圏 微ネタバレ感想

 友人がちょっと前にクリアして「どうにもラストに納得できない」ということだったので、借りてプレイしてみた。もともと体験版は触っていたが、崩壊編(バトル)がオマケ程度にしかないと感じられなかったので、フルプライスでは買わなくていいやというのが、率直な感想だったがこの機会に、最後までプレイしたので感想を残す。

SF全部のせ丼

 このゲームはアドベンチャーが主でシミュレーションはオマケ程度でしかない。その主なストーリーは文句がない。まず大前提として崩壊編で全キャラが集まるというのは分かりきっているところから、どう集まっていくのか?というのが醍醐味。各キャラのさまざまな視点から物語は広がっていく。例えばAくんにとってBちゃんは味方だが、Cの視点だとDちゃんはAを憎んでいたりする。これは428のようなシステムと少し似ているが、その開放される条件が崩壊編をやらないと進まないというシステムが私的にはいらなかった。この崩壊編はあくまでオマケなので「この先どうなる?」というモヤモヤを抱えたまま、崩壊編をだらだらプレイしなければいけないのはイラッとする。そこまで作り込んでいるものではないし、ノーマルPS4だと後半のステージから処理落ちしまくり、プレイが困難になってしまう。肝心のバトルシステムは一部の行動だけ取っていればクリアできるバランスなので、面白味は感じられない。

 ストーリーに話しを戻すと、この十三騎兵防衛圏は一言でいうと「SF全部のせ丼」である。思いつくSF要素が全部あって、Aくん視点だとタイムループ説、Bちゃん視点だとこの世は現実世界ではないかも、宇宙人、未来武器を持っていたりというようなのが、各キャラ毎に用意されている。そういう物語だが結局は全員集まって戦うというのは、崩壊編で分かっているのである程度は分かっていて展開していく。バラバラに思えるキャラクターが集結して、背中を預ける間柄になるのか?という”あいだ”を見るものと割り切ってプレイするのが普通だと思う。

 最近のアニメやマンガだと特に多いのが学生が主人公なのに、家族関係が見えないということ。この十三騎兵防衛圏も高校生達がストーリーを展開していくけど、ラストであることが分かって納得できる。(美少年、美少女しか活躍しないが)では、友人のようにラストに納得できないのかという問題は、自分は「気にならなかった」というのが感想である。

終わり方を主題としている作品ではない

 上記にも書いた通りこの作品は特殊な作り、展開、過去と現在(追想編、崩壊編)を行ったり来たり、もしくは裏切りの連続なので終わり方は素直に大団円という着地はさほど気にならなかった。あるキャラクターのせいで大問題になっているのに、なにも報いは受けず、ただ元に戻っただけとも取れるのはこれでいいのか…とはおもったw

 あとは気になった点でいうと、この作品は常に選んだキャラクターとは別に「何かしらの相手」が必ずいる。これは自問自答ばっかりにならず、会話で展開させていくのは素晴らしいと思うがラストでメイン以外のキャラクターを無理やりカップリングを作るのは、気持ち悪かった。そこに行き着くまでにひたすら幸福を見ているし。

 総評としてはアドベンチャーゲームには珍しく、2D絵がぬるぬる動いて、音楽も雰囲気に合い、フルボイスで進行していくのは素晴らしい。バトルについてはただポチポチ読み進めていくものにしたくなかったというのは分かるけど、ゲームとしては楽しめない。ストーリーも無理やり広げるのではなく、風呂敷をきちんと畳んだけど既視感のSFあるあるだらけで、新しいことは得られなかった。